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2011年7月14日 (木)

「インビクタス(負けざる者たち)」

51p6omc5ndl__sl500_aa300_ DVDで「インビクタス(負けざる者たち)」を観た。

昨年発表のイーストウッド監督最新作。

1995年、南アフリカ共和国。アパルトヘイトを捨て去り、黒人初の大統領になったばかりのマンデラのもと、南アフリカのラグビーチーム「スプリングボクス」は自国開催のワールドカップに国の誇りを掛けて臨むことになる・・・。

マンデラ大統領を演じるモーガン・フリーマンは実際のマンデラ大統領と旧知の仲であり、そんな彼がイーストウッドに企画を持ちかけて実現した映画らしい。

史実に基づいた話だけに、特に捻りもなく、ストーリーは極めてストレートに語られる。

演出も奇抜なところはなく、実に淡々としている。

それなのに観る者をこんなに熱くさせる映画に仕上げるとは、やはりイーストウッドは熱い。幾つになっても枯れない映画に対する情熱が、この映画の隅から隅まで染みわたってる。

しかし、マンデラはどのようにしてあの「交渉術」を磨いていったのだろう。

27年間独房で暮らしていた間も決して希望を捨てることなく、看守たちを観察し、如何に人心を捉えるか、政治家としての理念と手腕を培っていった。

恐るべき精神力である。

この映画の白眉は、大統領執務室にスプリングボクスの主将フランソワ・ピナール(マット・デイモン)を招き入れるシーンだろう。

フランソワに代表される白人たちは、黒人政権になったことで、これまでのアパルトヘイト政策の復讐を受け黒人たちに職を奪われ虐げられることを恐れている。それでいながら、黒人テロリスト(=マンデラ)などに何ができるのだという、王座を追われた独裁者の如き複雑な心境である。

そんなフランソワを、マンデラは英国流アフタヌーン・ティー・パーティーに呼ぶのだ。それもサシで、マンデラ自身がお茶を注いで。

この時マンデラはフランソワに何ら具体的な提案はしないが、フランソワはその帰途に深く悟ることになる。優勝するしかないということかと。

この二人の複雑な心理的な取り引きを描く段は、決勝戦の激しいシーン以上にドキドキする。

内田樹氏が「街場の中国論」の中で、1972年の日中共同宣言で戦争賠償請求権を放棄した周恩来の外交を「『恨みに報ゆるに徳を以てす』というエートス」と表現していたが、マンデラの政治手法はまさにこれに当たるのかもしれない。

いや、あのユーモアも交えて国民の融和を語る笑顔の奥にはもっと深く屈折した理念があるのだろう。何せ27年間独房につながれた末に打つ手なのだ。

共和党支持者であり、一時は政治家でもあったイーストウッドは、一貫して様々な角度から「アメリカ」を描いてきた映画作家だと思う。そんな彼が、政権交代直後の南アフリカに何を見ようとしたのかを考えてみるのも面白いかもしれない。

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