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2011年7月26日 (火)

「わすれた恋のはじめかた」

51btpxrzlxl__sl500_aa300_ 恋愛と人の成長物語を重ね併せた映画は少なくない。

古くは「愛と青春の旅立ち」なんかもそうだろう。

よくあるパターンとしては、主人公が何らかのトラウマ(またはコンプレックス)を引きずっていて、それが彼(彼女)に影を落としている(それがある意味彼(彼女)の魅力にもなっているのだけど―普段は明るい彼が時折見せる暗い表情・・・「何かほっとけない感じがするの・・・」とかね)。

そして、恋愛がうまくいきかけたところで、その「トラウマ」が原因で関係が破綻しかける。けれども、その「トラウマ」を乗り越え、人としても成長した時に恋愛も成就してハッピーエンド。

というのが王道のパターンかと思う。

この映画「わすれた恋のはじめかた」もその亜系のようだ。

3年前に妻を交通事故で亡くしたバーク・ライアン(アーロン・エッカート)は、辛い日々を乗り越えるために本を書き、今や自己啓発セミナーの講師としてその人気が沸騰中。愛する者を失った喪失感から人を救うために全米を奔走している。苦しい思い出の地シアトルでのセミナーも成功しつつあったが、滞在中のホテルでちょっと風変わりな女性(ジェニファー・アニストン)に心惹かれる。しかし、彼女との恋愛に向き合うためには、彼自身が逃げてきた過去と向き合わなければならなかった・・・

恋愛は人を成長させる(中には人をどん底に突き落とすものもあるけど)。成長物語+ラブ・ストーリー。ポジティブ・シンキングが大好きなアメリカ人にとっては恰好の素材なのだろう。

映画の設定は悪くない。

辛い過去を断ち切るように笑顔を振りまく男として、アーロン・エッカートはハマり役だと思う。

アーロン・エッカートは「この役ならアーロン」といった個性を築きつつあるいい役者だ。

けれどもこの映画はちょっと舌足らずな印象を受ける。

「愛する人の死」と正面から向き合うことを恐れてきた、けれどもそのことを利用した形で有名になってしまった男の歪んだ複雑な人生と釣り合うだけの物語が、恋愛相手エロイース(ジェニファー・アニストン)に足りないからだと思う。

エロイースという人柄を表現するエピソードは、もっとエキセントリックであってもよかったと思うし(脇目も振らないように人生と仕事を突っ走ろうとしている男を振り向かせる女性だ)、彼女自身が恋愛に素直に向き合えない背景ももう少し描きこんでも良かったと思う(映画の最初で軽くは触れられている)。

2番煎じっぽい邦題やパッケージ写真は甘いロマンチックな恋愛物語をメインに売ろうとしている風だけど、実際の物語のウエイトは主人公の屈折した成長物語に偏っている。

クライマックスでの義父(マーティン・シーン)との関係(確執からそして・・・)は感動的だが(少し取ってつけた感もあるけど)、売ろうとしているラブ・ストーリーの部分はそれに比べると弱くアンバランスな印象。

冗長にならずに全てを配分良く描くのは時間的にも難しいだろうし、どんな物語でもウエイトを置くべきポイントというものがある。

けれどもこの映画は、そのアンバランスさゆえにちょっと感動を削がれた感じがする。

そこが少し残念。

映画って難しいね。

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