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2009年3月31日 (火)

「モダンタイムス」

Modern_times 伊坂幸太郎の「モダンタイムス」を読みました。

「観る角度をいじれば、事実はいくらでも捏造できる」

魔王」から50年後の日本。とあるサイトの作成に携わったSE(システム・エンジニア)たちが、ある言葉を検索したことから、事件に巻き込まれていく・・・

今のところ、これが最新刊になるのかな。

漫画週刊誌「モーニング」に1年あまりにわたって連載され、大まかな粗筋をもとに、毎回編集者とディスカッションしながら作品が作られていったそうです。

そういう意味では、全体を通して読むとかなり異色なストーリー体裁を持った小説ですが、それを差し引いても、長編としての構成力は褒められたものではありません。

特殊な連載形態をとったせいか、全体の構成の短所を補って余りある、いつもの伊坂幸太郎らしいシーン毎の描写力もやや低調。伊坂幸太郎らしい魅力あるキャラクター描写も、あまり冴えていません。

こういう形態で作品を書き上げたことはひとつの挑戦だったのでしょうが、正直言うと、作品としては失敗作かも。

ただ、作者自身のSEという経歴を生かした着想点や、作者自身の考える作家論や組織論・国家論などが作中にちりばめられていて、新たな作品の芽吹きを予感させるところも少なくありません。

ちょっと引用すると、こんな感じ。

≪「いいか、小説ってのは、大勢の人間の背中をわーっと押して、動かすようなものじゃねえんだよ。音楽みてえに、集まったみんなを熱狂させてな、さてそら、みんなで何かをやろうぜ、なんでことはできねえんだ。役割が違う。小説はな、一人一人の人間の身体に沁みていくだけだ」「小説で世界なんて変えられねえ。届くかもしれねえ。どこかの誰か、一人」≫

≪動物というのは絶えず、進化の可能性を探しているんだ。突然変異の試行錯誤を繰り返している。国家や組織も一緒だ。見えない触手を無数に伸ばして、「変化のきっかけ」や「生き残る確率が増す道」を探している。国家も同じなんだ。自分が生き残ることだけを考えている、生き物だ。≫

この小説は、きっと伊坂幸太郎の今後の作品を生み出す土壌となることでしょう。これからの作品に期待します。

ちなみに・・・

・・・人は知らないものにぶつかった時、まず何をするか?「検索するんだよ」

ということだそうですが、僕も小説の主人公たちと同じキーワードでネット検索をしてみました。

恐ろしい事件に巻き込まれるということは今のところありませんが、講談社も粋なことやってますね。

まあ、そこは、読んで、検索してのお楽しみということで。

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