目の前の人に伝えること
昨年暮れの「クリスマスの約束」は、小田和正のライブ・ツアーの最後を飾るという形であったので、例年のようにカバー曲とオリジナル曲を歌い混ぜ「うた」を伝えるという趣向ではありませんでした。
僕は小田和正が歌うカバー曲が大好きなので、ちょっと残念でした。
今日、一昨年の「クリスマスの約束」のビデオを懐かしんで観ていたら、小田和正がこんなエピソードを話していました。
若い頃、本気で海外進出を考えていて、ジョージ・マーティンがオフコースのプロデュースをするという話があり、ロンドンでジョージ・マーティンに会った。そのときに言われた。「日本人のアーティストが世界へ進出するのは難しい。ポール・マッカートニーはラッキーだったよ。彼は英語が話せたからね。」でも、そのうち自分(小田和正)は日本語で歌うことがカッコいいと思うようになった。
たまたま読んでいた内田樹氏のサイトのエントリー「2009.01.13 足元を見よ」と繋がりました。
ジブリが出している雑誌「熱風」に載った外国特派員協会での宮崎駿氏のインタヴュー。
「実は何もわからないんです。僕は自分の目の前にいる子供達に向かって映画をつくります。子供達が見えなくなるときもあります。それで中年に向かって映画をつくってしまったりもします。でも、自分達のアニメーションが成り立ったのは日本の人口が一億を超えたからなんです。つまり日本の国内でペイラインに達することができる可能性を持つようになったからですから、国際化というのはボーナスみたいなもので、私達にとっていつも考えなければいけないのは日本の社会であり、日本にいる子供達であり、目の前にいる子供達です。それをもっと徹底することによってある種の普遍性にたどり着けたらすばらしい。それは世界に通用することになるんだ、って。」(『熱風』、2009年1月号、スタジオ・ジブリ、p・61)
内田氏はこれを宮崎氏の慧眼を示す言葉と記しています。
あらゆる仕事には「それで飯が食えるかどうか」という分岐線があり、日本のクリエイターは日本人相手に日本語ベースの制作物を提供しているだけで、「飯が食える」というきわめて恵まれた制作環境にいる。そして、「飯が食える」どころか、うまくすると「世界的レベルの仕事ができる」。
それは「内向きだからダメ」ということではない。
「脚下照顧」。足元を見ろ。私たちが普遍性にゆきつく隘路があるとしたら、それは足元からしか始まらない。
翻って、誰にとっても、目の前の人たちに対して真摯に仕事に取り組むことが大切であり、そうすることで、それはより多くの人に認められる仕事になっていくということ。僕も肝に銘じて、仕事をしよう。
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コメント
おはようございます。
大変勉強になりました!
まずは足元を見ろ・・・。
一度ゆっくりと考えて見ます。m(_)m
投稿: モアイ | 2009年1月17日 (土) 05時22分
モアイ君、久しぶり!
周りの雑音に惑わされずに、目の前の仕事をコツコツやり続けるというのは、簡単なことではありませんね。
お互いに頑張りましょう!
投稿: akamatsu | 2009年1月17日 (土) 20時38分
見出しや文章の内容と写真との距離感がなんか心地いいですね(^^)。
投稿: iri | 2009年1月23日 (金) 19時45分
iriさん、ありがとうございます。
このところ忙しく、腰を据えてブログを書く時間がなくて、いつも夜中に思いついたことだけを書いています。
写真もたまたま撮ったものを合わせてみただけなんですが、そういう風に言っていただけると嬉しいです。
投稿: akamatsu | 2009年1月24日 (土) 00時45分