「ノーカントリー」
DVDで「ノーカントリー」を観ました。
シンプルなストーリーにして、途切れない緊張感。暗黒物語の果てにあるのは・・・
80年代初頭。テキサス州の砂漠で狩りをしていたベトナム帰還兵モス(ジョシュ・ブローリン)は、麻薬密輸団の銃撃戦後の死体の山と大量の麻薬と200万ドルの現金を発見する。そして、その金を持ち逃げしたモスは、冷徹非常な殺し屋シガー(ハビエル・バルデム)に追われ始める。事件を知った昔気質の保安官ベル(トミー・リー・ジョーンズ)は、無力感に囚われながらもその追跡劇に加わっていく・・・。
第80回アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚色賞・助演男優賞(ハビエル・バルデム)を受賞したコーエン兄弟の最新作。
物語は、冒頭に紹介した通りのシンプルなもので、音楽も全くない映画ですが、ハビエル・バルデムが最初の殺人を犯す冒頭から、スクリーンの彼方へ去っていくエンディングまでの122分、緊張は途切れません。
それは、「現実」と「非現実」、「シリアス」と「ユーモア」が高次元で絡み合う、「映画とはかくあるべし」とでもいうような見事なコーエン兄弟の演出と、一度見たらしばらくは夢にでも出てきそうなハビエル・バルデムの存在感によるものでしょう。
大金をネコババした小悪党に過ぎないモスと、ターミネーターのように非現実的な様相で、しかし「逃れられない運命」のように現実感溢れる殺人の山を築いていくシガー。
彼らの追跡劇を見つめる保安官ベルの視点が最も観客に近いものとして描かれています。
そして、この映画は、保安官ベルの昔を懐かしみ今の無秩序を嘆くモノローグから始まり、ベルが見た亡き父が出てくる夢の話で唐突に終わります。
保安官も観客もなすすべもなく傍観するしかない死神のような殺人鬼シガーが、追跡劇の途中で寄った雑貨屋でコインを投げて店主に問います。
「裏か表か?」
「賭けに勝ったら何がもらえるんですか?」と問う店主に、「おまえはすべてを手に入れる」と言うシガー。そして、店主は・・・。
終盤、コインを投げて運命を問うシガーに対して、「そんなものは意味はない」と言うモスの妻。そして、モスの妻は・・・。
「運命」という暗闇の果てには何があるのでしょうか。
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