再考 佐野元春
先日からNHKのサイトで「サウンドストリート」の録音テープの蔵出し公開が始まっていて、月曜日担当の佐野元春と、火曜日担当の坂本龍一の2-3回分のDJがアップされています。
当時、テレビを見なかった僕は、NHK-FMの「サウンドストリート」が最も楽しみにしていた番組で、月曜日から金曜日まで、ほとんど欠かさずに聴いていました。
もう四半世紀前の話です。
僕もいまだに当時の番組をそのままエアチェックしたテープを結構持っていますが、今回、このサイトで久々に「元春レディオ・ショー」と坂本龍一のボソボソ喋るDJを懐かしく聴き、デビュー間もない頃の佐野元春の音源や、ジャパンなどの当時の坂本龍一周辺の音源を聴き直しています。
で、今日は佐野元春の話。
デビュー・アルバムの「BACK TO THE STREET」から「Heart Beat」、「SOMEDAY」と初期の3枚を何度も聴き直しました。
誰もが指摘してきたように、ブルース・スプリングスティーンなどの模倣的なところはありますが、今聴いてもどの楽曲も非常にクオリティーが高いことに驚かされます。
親しみやすいけれども、決してポップなだけでないメロディー。そして何よりも当時の音楽界にあっては革新であった「詩」世界。
耳に新しく響く横文字の羅列だけでなく、日本のポップ・ミュージックに使われることがなかった文学的な表現も多く取り入れることで、日本語によるロックの可能性を切り開き、現在のJ-POPの礎を築いたと言えるかもしれません。
日本語のロックを作り上げた詩人としては、すこし上の世代の松本隆が代表になると思いますが、松本隆が専業詩人として文学性と通俗性の止揚を目指したのに対して、佐野元春はステージという現場に立ち続けるロック・ミュージシャンとして、ビート詩人として、文学性と音楽性の止揚を命題としていたと思います。
その姿勢は、4枚目の「VISOTORS」として結実し(メジャー・レーベル初の日本語ラップ!)、ポエトリー・リーディングの活動に至り、大学文学部の講師まで勤めるようになります。
しかし、何といっても当時の佐野元春の「勢い」のあること!
歌詞で「憂鬱」を歌っていても、その音、その言葉、その声の分子は絶え間ないヴィヴィッドなヴァイヴレーションを内包しています。
まさに「日本のロックの未来」がここにあった瞬間でした。
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コメント
NHKって貴重なアーカイブの宝庫なんですよね。
民放にプログラムの貸し出しなんてのもやってるみたい。
私は80年代のミュージシャンのセッション・ライブ番組である
”セッション83”とか結構録音してましたよ。
当時はカシオペアとかスクエア、プリズムなどが出演してて、
うちのバンドの参考演奏資料としてよく活用してました。
アナログテープからDATやCDにコピーして保存してます。
投稿: ドバイ | 2008年11月29日 (土) 08時59分
「サウンドストリート」当時は、NHKではFM音源の保存は義務化していなかったみたいで、今回の企画はエアチェックしていたリスナーの協力もあって実現したもののようです。
「セッション83」は僕は聴いていなかったなあ~。なんでかな?
>アナログテープからDATやCDにコピーして保存してます。
ウチに段ボール箱一杯にあるカセットテープの山を整理しないとと思いつつ、ほったらかしにしています。
今では、結構、宝の山だと思うのですが。
投稿: akamatsu | 2008年11月29日 (土) 09時13分