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2008年11月27日 (木)

「アメリカン・ギャングスター」

American_gangster DVDで「アメリカン・ギャングスター」を観ました。

「光と影」「清と濁」二面性を持つ二人の主人公たちの「ギャング映画」

70年代初頭のニューヨーク。ハーレムに君臨してきた黒人ギャングのボスの運転手を務めてきたフランク(デンゼル・ワシントン)は、あとを引き継ぎ、ベトナム戦争を利用して良質なコカインを直接安価に仕入れることで、新たな覇権を築く。しかし、フランクは華美な生活をすることなく、目立つことを嫌い、そのために警察にもマークされない。一方、自堕落な私生活を送りながらも、公然と汚職がはびこる警察組織の中で正義を貫こうとする刑事リッチー(ラッセル・クロウ)は、特別麻薬取締局に配属され、徐々にフランクに迫っていく・・・。

人間の清濁二面性を描きだすという「アメリカ・ギャング映画」の文法に則った映画です。

そういう意味では新しさはありませんが、実在した二人の人物をデンゼル・ワシントンとラッセル・クロウというオスカー俳優が等分に演じることで、シンメトリカルなバランスの良さが重厚感を生み、非常に構成の巧い映画だと思います。

リドリー・スコットの演出も過剰なところはなく、二人それぞれの物語を淡々と進め、二人が初めて対面する最後のクライマックスまで、静かに、しかし熱く描いていきます。銃撃戦やカー・チェイスもなく、派手な見せ場はないものの、二人の男の生き様を描きながら、徐々に緊張感を増していく演出は手堅く見事です。

「悪」と「正義」の二人ではありますが、それぞれの主人公の「光と影」の二面性を描くことで、観客は等分に感情移入が許され、2時間37分の長尺も忘れて映画世界に浸ることができます。

ただし、エピソードの時間的なバランスは必ずしもいいと言えないところもあります。もう少し刈り込んでもいいエピソードもあるように思われる一方で、最後は少し駆け足的な印象も拭えません。やはり、こういう長時間の映画は編集が要であり、最も難しいところなのでしょう。

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