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2008年9月 9日 (火)

「ひとりでは生きられないのも芸のうち」

Hitorideha 内田樹氏のエッセイ集「ひとりでは生きられないのも芸のうち」を読みました。

一日10000件というヒット数の内田氏の人気ブログの記事を編集したエッセイ集です。

内容は、著者が勤める神戸女学院大学大学院でのセミナーで扱った問題から、家族、男女関係、そしてメディア論まで、多岐に及びますが、一貫して基調として流れるテーマは、「リソース(物心両面における資源)」と「共同体」というキーワードに収斂されるように思います。

CanCam的めちゃモテ戦略を分析しても、少子化問題やニート・フリーターの問題を論じても、限られた「リソース」を如何に適正に分配して、「共同体」の中で生き抜くか、「共同体」を健全ならしめるかといことが語られています。

そして、もうひとつのテーマとして「ほんとうの自分」という考え方、「自分探し」に対する批判。

フランスのユダヤ人哲学者、エマニュエル・レヴィナスを師と仰ぐ著者は、レヴィナスの唱える「pour l'autre 他者のために/他者の身代わりとして」=「交換」=相互的な「存在の根拠づけ」、「贈与」(=人間は自分の欲するものを他人から与えられることでしか手に入れることができない)というテーマを礎として、「私たちの時代において、『隣人愛』というのがほとんど死語になってしまった」理由を語ります。

それは、「私たちが自分自身のことを愛するのに夢中で、隣人のことを意に介さなくなったからではない。『ほんとうの自分』という幻想的な『中枢』を想定して、・・・現実の自分をそのまま愛することがうまくできなくなっている」からだと断じます。

一見、クールに難解な言葉で語られていますが、感覚的には分かっていてもなかなか言葉で表現しがたい問題に、暖かい灯をともすようなエッセイ集だと思います。

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