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2008年7月25日 (金)

「クライマーズ・ハイ」

Climbers_high

映画化されて公開中の横山秀夫のベストセラー「クライマーズ・ハイ」を読みました。

発表当時、「このミス」や各種書評のトップランクを独占したことで、話題になった小説です。

勝利なき父親たちの物語

1985年8月12日に起こった未曾有の大事故、日航ジャンボ123便墜落事故の全権デスクを任された地元新聞社の遊軍記者を主人公に、新聞社内の熱い戦い(権力争い、仕切り合い)や記者の家族・友人など、様々な軸を据えて描かれた作品です。

地元の新聞社(上毛新聞)の記者として日航ジャンボ墜落事故を追った経験を盛り込んだ作品だと思いますが、新聞社内の状況にここまで切り込んで描いているのは、多分に私小説的なところもあるのでしょうか。ある意味、大胆な渾身の作品と言えるのかもしれません。

事故自体は史実ですので、ストーリーを大きく弄りようはありませんが、事故をめぐる人間関係や事故に対する捉えかたを多くの切り口で描いています。

ここまで沢山のエピソードを盛り込む必要があったのかという内容ですが、その中でも肝となるのは社内組織と親子という2つの軸によって描かれる人間関係の葛藤でしょう。特に父と子を描く語り口は、この物語の一番の泣かせどころだと思います。

畳み掛けるような文章と力強い描写で、非常に筆力のある作家だとは思います。その熱い文章ゆえに、気がつくと読まされているようなところもあるのですが、よくよく考えると、どうも話の展開的には「?」というところもあります。

これは「半落ち」でも感じたことですが、もう少し注意深く筆を進めれば、非の打ちどころがないのにと思わざるを得ません。

その圧倒的な筆力のために、見過ごされがちになってしまうのかもしれませんが、この辺りは、周りのスタッフや編集者と十分なディスカッションがなされていないのでしょうか。

様々な評価はあると思いますが、一気に読まされる熱の籠った小説です。

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